河童、鍾乳洞へ進入す。(後編)

十分に着込んだらいざ洞内へ。
洞内の通路は少し狭く、傾斜や階段もあったりするので所々屈んだり、手すりを頼りに進んでいきます。
地面や岩壁は濡れていて、天井からは時折染み出した水がポタポタと垂れて河童の頭に当たりました。

どうやらこの大滝鍾乳洞は他の鍾乳洞よりも水分が多いようです。
水分が多いことは鍾乳石の発達に好都合のようで、1㎝伸びるのに100年、
また泥が洗い流されることで白く透明度の高い鍾乳石が形成されるとのことです。

それにしても、1㎝伸びるのに100年掛かるとは遠大な話です。
1年で0.1mmずつ、1m伸びるためには1万年掛かるわけですから、大変貴重なものだと実感させられます。

左の写真、天井から下に向かって伸びているものと、岩場から上に向かって伸びているものがいくつもあります。
分類上だと、前者が「鍾乳石」、後者が「石筍」と呼ばれているそうです。
一般的には石筍は鍾乳石よりも成長速度が遅く、1㎝伸びるのに数十年から数百年掛かるものまであるとのこと。

右の写真は「赤い鍾乳石」で上が見切れていますが、床から天面にかけて繋がっていて柱のようにも見えます。
こういった赤い色をした鍾乳石はこの後もいくつか見かけましたが、他では見られないものだそうでこちらも大変貴重です。

こちらは大滝鍾乳洞の名前の由来にもなっている「大滝」です。高さは約30mもあるそうです。
狭い通路とは打って変わり大滝がある場所は主に上にかけて開けています。
見上げれば、岩と岩の間から細く水が流れているようです。
大滝と呼ばれる割にはか細い感じもしますが、水の流れはそこそこ早くて迫力もありますし、
何より30mの高さから水流が落ちてくる様は壮観でした。
ちなみに滝壺の亀はたぶん石でできていて生きていません。写真に収めていませんが滝の隣の壁には大滝不動尊が彫られています。

全体的に「天」とか「月」とか「鬼」という字で名付けられた場所が多い印象でした。
これは鍾乳石が持つ神秘性とか神々しさ、あるいは妖しさみたいなイメージが影響しているように思えます。
他にも写真の「象牙の林」や「流石鏡」のような場所が印象的でした。

ゆっくり回ってたつもりでしたが、気がつけばもう出口。
涼やかで神秘的な空間を惜しみつつ一歩外に出れば、もわっとした暑さが襲ってきます。急いで上着を脱いでいざ下山。

行きはケーブルカーで引っ張ってもらいましたが、帰りはケーブルカーを横目に歩いて戻ります。
帰り道はそれほどきつくもない緩やかな傾斜の斜面でしたが、鍾乳洞の探索でそれなりに足にきていたようで、
いい感じにふくらはぎ裏辺りの乳酸の溜まりを感じながら、下りていきました。

受付があったところまで戻ったら、入場券と一緒にもらったおみくじを引いてしばし休憩。
ベンチの目の前にあるニジマスの釣り堀をぼんやり眺めます。

ニジマスの釣り堀は一竿300円、4竿まとめて頼むと1,000円。
細い竹の竿に見えないくらい極細の糸が備えられていて、釣り糸が切れるまで挑戦できるので竿の本数売りをしているわけです。
禁止事項として、魚の手づかみ禁止・バケツなどで掬うの禁止・自前の釣り道具持ち込み禁止・糸の付け替え禁止、
とルールは多めですが、当たり前のことなのでちゃんと守りましょう。
ニジマスが釣れれば、その場で焼いて食うか、持ち帰るか、リリースするか選べます。

まずは4本で挑戦。練り消しみたいな触り心地のエサを釣り針に引っ付けて投下します。
こんなんで魚食いつくのかなと、やる前は怪しんでいましたが、意外なことに投下した途端すぐ食いつきます。
ある程度泳がせ、少しずつ竿を立てていき、弱らせていく。
魚が水面に顔を出し動かなくなったので「これは行ける!」と思ったのですが、

「―――プツン」

引き上げようとした途端、急に魚が体を動かし糸が切れてしまいました。
残念。1匹目で早速釣れたかと思ったんですがね…

その後も同じような感じで糸を切られてしまい、4本全てを失ってしまいました。

しかし、このままでは引き下がれないので、財布から千円札を抜き出し再度4本で挑戦。
すると、再挑戦の1本目。
少し小ぶりのニジマスが掛かり、いい感じに弱らせることができました。
慎重に少しずつ引き上げ、たまらず陸地に引き上げる直前に糸を手繰り寄せ、見事にニジマスをゲット!やったね!

その後、彼女にも釣ってもらいたかったので残りの竿を渡して挑戦。
惜しいところまで行くのですが最後引き上げるときに糸を切られて逃げられることが続きます。

すると、後ろで見ていた釣り堀のおっちゃんが、
「引き上げるときに釣り糸を触らないようにして、とにかくゆっくり、ゆっくり引き上げるといいよ」とアドバイスをくれました。
そのアドバイスを聞いて臨んだ最後の1本。
少し大きめのニジマスが掛かりますが、たくさん泳がせ念入りに弱らせ、水面から顔を出したところで、
アドバイス通り、慎重にゆっくり、ゆっくり、逸る気持ちを抑えながら、少しずつ引き上げていく。

その様は行きで乗ったケーブルカーの如し。

そうして陸地までゆっくり引き上げ、無事2匹目のニジマスをゲットできました。
ただ、最後の1本はその1匹で力を使い果たしたのか、すぐに糸が切れてしまい終了。

まあ、1人1匹ずつ釣れたのでよかったと思います。

釣れたニジマスは当然その場で焼いて食べます。
ちなみに、魚は捌くのも焼くのもセルフです。
台所にまな板と小さめのナイフが用意されているので、絞めてから腹を裂き内臓を取り出していくのですが、
釣ったニジマスの活きがよいのと体面がぬるりと滑るせいで何度も手から逃れていきます。
そうして格闘すること数分。やっとの思いで1匹目を絞めて捌いていきます。血合いも綺麗に洗い流し、二匹目に取り掛かります。
二匹目も絞めるのに苦戦しますが、1匹目よりかは時間が掛からず作業ができ、どうにか魚の捌きを完了できました。

後で気づいたのですが、台所をよく見ると作業用のゴム手袋が備え付けられていたのでこれを使えばもっとスムーズだったかもしれません…。

炭や網は事前に用意してくれていたのですぐに焼けます。
紙皿と割り箸と塩は購入制なので先に買っておいて、ニジマスに塩をまぶしたら焼きにかかります。
焼き上がりは15~20分程掛かるそうなので、網の前でじっくり待ちます。
10分程で裏返してみると、皮がいい感じに焼けており、身もジュワジュワと音を立てて、十分火が通ったことを伝えてくれます。
しっかり焼けたので皿に載せて、まずは一口。
「うまッ!全然泥臭くない!」
子どもの頃に食べたニジマスはそれなりに泥臭さがあったので、そのイメージで食べたのが、
良い意味で予想を裏切ってくれました。淡白な味わいの中にも脂が程よくのっていてとても美味です。ご馳走さまでした。