
1.静かな退職は現代の価値観に合った合理的な働き方
近年、耳にすることが多くなった『静かな退職』という言葉。
ワークライフバランスの重視やジョブ型雇用の広がりと共に俄かに囁かれるようになったこの言葉は、現代社会を背景にして生まれた合理的な働き方の一つです。
この記事を見に来てくださったあなたは、きっとこの『静かな退職』に興味を持ち、あるいは実践を考えているのではないでしょうか。
この記事では、「静かな退職の概要や背景」「実践のためのポイント」「実践に伴うリスク」の3点を解説し、さらに、「静かな退職と相性のいい副業」についても理由の解説を行います。
2.静かな退職とは?
海外発の『quiet quitting』=仕事を最低限にとどめる働き方
『quiet quitting』という言葉は、アメリカでキャリアコーチを務めるブライアン・クリーリー氏によってSNSに投稿された動画の中で使用され、大きな議論を生み出しました。こと日本においても近年、この話題は大きな注目を集め、『静かな退職』と訳されて広く使われるようになりました。
「退職」という単語が入っているので、「静かに(波風を立てずにor会社にバレないようにこっそりと)退職する」というような意味で誤用されがちですが、
静かな退職は、実際に退職するわけではなく、会社に所属しながらも熱意を持たず、必要以上に働かない働き方のことを指しています。
日本における解釈(『働かないおじさん』との違いなど)
日本においては2000年代以降、『働かないおじさん』という言葉がよく使われていました。
ただ、この『働かないおじさん』と『静かな退職』とは似て非なるものです。
「労働意欲が低くなり、必要以上に働かない」という点についてはどちらも共通していますが、
働かないおじさんが年功序列制度や終身雇用制度を背景に、頑張らなくてもそこそこ働けば安定して高い報酬が得られるという意識が動機付けになっているのに対して、静かな退職はワークライフバランスの重視や会社に対する不信感・エンゲージメント(愛社精神)の低下など、働くことに対する価値観の転換によって生まれた考え方という点で異なります。
「手を抜くこと」と「線引きして働くこと」は違う
よく勘違いされやすいのが、静かな退職を選ぶ人が職務を全うせず、意図的に手抜きの仕事をすることで会社やその会社に関わる者に迷惑を掛けるという批判があります。
ですが、それは静かな退職という働き方と言うより、単なる「職務怠慢」です。
静かな退職は与えられた仕事は決められた通りにこなす一方で、それ以上のことはしないという考え方であって、時間の使い方や責任の範囲を自ら線引きして働くということです。
静かな退職が生まれた背景
静かな退職が生まれた背景として、主にワークライフバランス・メンタル不調・評価の不透明さの3つが挙げられます。
これまでの仕事に人生を捧げるような働き方を美徳とする考え方は、ワークライフバランスをより重視するようになった現代の社会人の労働観にはそぐわず、また長時間の残業や人間関係の悩み、パワハラ・セクハラを始めとした様々なハラスメントが職場において発生している現実も労働者の職場離れを加速させています。
さらに、人事考課の曖昧さによって、自分の頑張りや能力が正当に評価されていない、あるいは正しく評価されることはないと考えれば、努力して仕事をするインセンティブが失われるのは必然です。
こうした日本の労働社会における構造的な闇や思考停止的な暗黙の了解に対するアンチテーゼとして生まれたのが静かな退職という考え方なのです。
3.静かな退職を実践する5つのポイント
①与えられた業務に集中し、それ以上は抱え込まない
まず大前提として、与えられた仕事はきっちりこなすことが重要です。
仕事をせずサボっているだけでは「無責任な甘え」として捉えられてしまいます。
静かな退職をする上で重要なのが、「何もしない」ということではなく、任された範囲の業務にだけ責任を持って対応する姿勢です。
ですので、それ以上のこと―――たとえば「手伝って」と言われた他部署の雑務や、自分の担当外のトラブル処理などは可能な限り断る勇気も必要です。
周りにいる困っている人を助けると、その時は気分が良いかもしれません。
しかし、それが積み重なると、気づかないうちに本来の業務の質を下げてしまう恐れもあります。
②評価の軸を理解し、必要最低限の「成果」だけ出す
静かな退職を実践する上では、自分が何によって評価されているかを明確に知ることが大切です。
営業であれば数字、事務職であれば処理スピードや正確さ、技術職であれば納品物の完成度など、業種や役職によって評価基準は異なります。
その軸に対して、最低限の成果を安定して出し続けることが「文句を言わせない静かな退職」のコツです。
逆にいえば、評価と関係ない努力(会議での発言、気配り、雑務など)にエネルギーを割くのは非効率ともいえます。
③無償労働や雑務は断る勇気を持つ
「〇〇さん、これお願いできる?」と頼まれたとき、つい断れず引き受けてしまう人は多いのではないでしょうか。
責任感の強い人や「いい人」に見られたい人ほど、断るのが苦手なものです。
かくいう私も必要以上に周りの目を気にしたり、いい人ぶろうとして、つい安請け合いすることも何度かありました。
ですが、静かな退職を貫くなら、「断る力」を持つことは必須スキルです。
そして、断る際は言い方を工夫すれば角は立ちません。
たとえば、
「今、○○の作業で手がいっぱいなので難しいかもしれません」
「優先度の高い業務に集中したいので…」
といった表現を使えば、冷たい印象を与えずに断れます。
④残業ゼロ・定時退社を徹底する
静かな退職において、時間の使い方は非常に重要です。
定時で帰ることが普通というマインドを持つことが、まず最初の一歩です。
業務の効率化や優先順位の明確化によって時間内で終わらせるスキルを身につけることが求められます。
上司や同僚に「先に帰って申し訳ない」と思う必要はありません。
むしろ、時間を守ること自体がプロフェッショナルな姿勢です。
⑤周囲との軋轢を避ける「態度」と「言い方」の工夫
静かな退職を実践する際、最大の障害となるのは人間関係です。
「あの人、やる気ないよね」と陰口を言われたり、上司との関係がぎくしゃくしたりすることもあるでしょう。
だからこそ、表向きの態度はあくまで「協調性」を保つことがポイントです。
そしてそれは決して大袈裟なことではなく、「報連相をしっかり行い」「礼儀や挨拶を忘れない」といった最低限の行動を実施すれば事足ります。
「やることはちゃんとやっている人」という印象をキープするだけで、周囲とのトラブルはかなり避けられます。
4.静かな退職にはリスクもある
人間関係の悪化/評価ダウン/異動・降格の可能性
前述している通り、静かな退職には周囲との関係性を悪化させる潜在的なリスクが常につきまといます。
静かな退職を実施することによって、作業量の偏りやチーム全体の生産性低下が発生する場合に良い顔をされなくなることも否定はできません。
しかし、静かな退職とは本来、その人がワークライフバランスを重視するための働き方として選んだ選択肢の一つであって悪意のある行動ではありません。
与えられた仕事をきっちりこなし、報連相や挨拶を欠かしていないのであれば、法令違反でもモラル違反でも全くありません。
また、パフォーマンスが目に見える形で下がっていると判断された場合、評価ダウンやそれに伴う異動・降格もリスクになります。
もっとも、静かな退職の目的が業務負担を現状よりも軽減することにあれば、目的を達成していることになるので問題はありませんが、現状維持を希望している場合には注意が必要です。
自分だけが「損している」と感じる瞬間も
必要以上に働かず、自分のペースを保てるメリットの一方で、周りと自分を比較したときに自分だけが「損している」感覚に陥ることもあります。
たとえば、自分は現状のポストのままで周りの同僚が昇格・昇進している姿を見ていると、「自分はこのままでいいのか?」と迷いが生じるかもしれません。
また、自分が定時で帰る中、残業して頑張っている同僚が上司から褒められていたり、業務で何らかの好成績を出した同僚が皆から称賛されている光景を目にして、妬みや劣等感を感じることもあるかもしれません。
こういった感情を抱くことはおかしなことではなく、ある意味で自然な反応です。
ですので、静かな退職を選ぶときは、「何を優先するか」という自分なりの価値観や基準を明確にしておくことがとても大切になります。
心理的ストレスにどう向き合うか
ワークライフバランスを重視する働き方に対して、労働者側も企業側も一定の理解が進んでいるとはいえ、静かな退職を実施する中で前述のようなリスクに直面する機会はいつか訪れます。
人間関係の悪化によるストレスや後ろめたさ、「本当にこのままでいいのか?」という迷いによって自己肯定感が揺らぐこともあるかもしれません。
そんなときに大切なのが、他人と比べないこと、そして自分なりの軸(自分が何を優先するか)を持つことです。
「お金よりも時間を大切にしたい」
「自分なりのペースで働きたい」
「体調を崩すことがないように無理なく働きたい」
「今は副業の準備期間」
というように自分の中で目的や優先事項がハッキリしていれば、ブレずにいられます。
もし、現状、働くことがつらく、抱えきれないほどストレスが大きいようであれば、その時はおとなしく休職や転職を検討しましょう。無理は禁物です。
5.静かな退職と副業は相性がいい
「空いた時間」をどう使うかが肝心
静かな退職によって空き時間ができればその分、自分のための有意義な時間に充てることができます。
家族との時間を増やしたり、スキルアップや趣味の時間に充てたり、本業とは別に副業をしたり、働きすぎの方はただ休むだけでも有効な時間の使い方になるでしょう。
ただ、せっかくできた空き時間を漫然と無為に過ごしてしまうのは少々もったいないです。
時間は有限の資源なので目的意識をもって過ごすことが大切になります。
副業があることで「静かな退職」が成り立つ理由
何のために静かな退職を行うのか。
人それぞれ置かれた状況や将来なりたい人物像の違いによって様々ですが、私は空き時間の活用方法として、「副業」をおすすめします。
空き時間で副業を行い、収入を得られるようになれば経済的余裕が生まれますし、静かな退職ではなく、本当に退職・転職を行う際に、副業で得た経験を活かしたりと、その後のキャリアに向けて選択肢を拡大することもできます。
そして何より「余った」熱量を職場以外の場所でぶつけることができるので、会社での自分の評価や周囲の目が気にならなくなり、自己肯定感を高める効果も期待できます。
働きながら副業を始めるポイント
副業は「空いた時間にやる」ではなく、あらかじめ時間を決めて取り組むのがコツです。
たとえば「平日の夜1時間だけ」など、無理なく継続できるペースで始めましょう。
バレないようにするには、住民税を「普通徴収(自分で納付)」にすることが大切です。確定申告の際に選べば、会社に通知が行きません。
顔出しなしでできるWebライターや動画編集など、匿名で始めやすい副業からチャレンジするのもおすすめです。
副業初心者の方は特にWebライターがおすすめです。
下記まとめていますので参考にしてみてください。
まとめ:静かな退職はゴールではなく“再スタート”
静かな退職は「甘え」や「逃げ」といったネガティブな言葉で語られるものではなく、自分らしさを勝ち取るための合理的な働き方です。
会社や職場という所詮は『狭い箱庭』の中でのルールや評価に囚われ過ぎることのないよう、自分のペースを整えるための方策として活用してもらいたいです。
もし本業の代わりにやりたいことが見つかっていなければ、まずは手軽に始められるWebライターの副業から始めてみましょう。
『静かな退職』+『副業』で、あなたの人生がより豊かで幸福に満ちたものとなりますように。
